根岸病院分会NEWS 第13号

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「医療は社会保障だ」
10・25集会で問題提起

 10月25日、国分寺市内で「都立病院をつぶすな!住民と医療従事者の集い」が開催されました(主催・多摩連帯ユニオン根岸病院分会)。杉井吉彦・国分寺本町クリニック院長の講演の要旨を報告します。

 今年の始めから医療問題が毎日の診療で突きつけられる状況が起こっています。
 一昨年からの国公立病院統廃合問題で全体的に医療が縮小化になる、そこにコロナが起り、様々な問題が露呈しました。

予想できたパンデミック

 日本でもパンデミックは予想された。しかしPCR検査をやるところは、圧倒的に少ない。 それどころか経済を回すためにと、感染を広げる政策を取っている。お金を使うなら旅行に使えという。医療の原則から言うと、まったく本末転倒です。その間に保健所の増員や、PCR検査を積極的にやるべきです。ヨーロッパ型あるいはアメリカ型の大爆発につながらないという保証は一つもない。
 現在の状況で、本当に医療がこんなことでよかったのかということです。

医療は公的なものだ
 
 今回頑張ったのは、圧倒的に公立病院です。なぜか。民間病院の場合、コロナ患者を受け入れたら、院内感染を予防するために必死になって努力しなければならない。胆石症や白内障の手術もその患者がコロナかどうかわからないから、結局手術が延期になる。結果として、病院の経営がだめになる。
 本来医療が持っている公的な一面が非常に重要だということははっきりわかった。民間病院ではクラスターが起こった。なぜかというと感染対策のお金がないから、当然手抜きをする。都立病院は補助があるからクラスターが発生していない。そういう状況を考えると、公立病院の本来持っている公的な側面がこれほどコロナ感染で問われたことはなかったというふうに思うわけです。

gotoトラベルではなく、健康と生活を

 独立法人化で何が起こるか。コロナに対する対策にお金が入らなければそれは手抜きをするわけです。PCR検査も全員にやろうとしない。だって金がないから。そのことによってクラスターが起こるということははっきりしている。
 医療は本来は予防なんですよ。癌だって、なる前に検査したほうが医療的には絶対にいい。そのことがコロナに関してはできていない。
 gotoトラベルの金があっても検査をする金がない。もしくは自粛を要請しても、その保障がない居酒屋さんがいっぱいある。わけのわからない状態に今なっているのが現実です。

自由な診療の崩壊

 高齢者数が増えて、病気が増えているにもかかわらず、診療報酬は増えていない。なぜかというと、医療費が抑制されているから。
 自由な診療の破壊が進んでいます。いままでは先発医薬品を出してもなんも言われなかった。ところが今では生活保護者に対しては先発品を出したら、なぜ先発品を出したのかということを一言書かなきゃならない。患者にもジェネリックを強制する理由がどこにあるんだという不満があります。
 もう一つ、医者にかかりにくくなっている。美濃部都政の時は、一部負担金はなかったんです。いまや70歳と75歳以上ぐらいの人が三割もしくは二割になっている。公的保険の考え方から言えばゼロ割が正しい。本来はそうあるべきです。そうしないから診療報酬も下がる。
 現在、日本では、病院や診療所も含めてかつてないほどの医療抑制、診療抑制が起こっている。とりわけ小児科・耳鼻科を中心にものすごい減り方です、すでに悲鳴が上がっています。一番は、診療にお金をかけられない状況になったということが一番大きい。自民党支持の東京医師会さえもgo toキャンペーンやるくらいならこっちに金くれと言っている。
 昔、コメ、国鉄、健保が(赤字の)3Kと言われた。コメは自由化され、国鉄は民営化された。最後に残ったのが医療・介護・福祉です。

安心できない社会保障

 10月18日の世論調査(表面右上の写真)で、社会保障制度について83パーセントの人が安心できない、もうこういう状況になっている。
 社会保障がまるで絶望的だということをこれは示している。安心できないという理由について「少子化による支え手の減少」これはあります。
 「非正規雇用の人が増え、制度が機能していない」
 やっぱり経済問題とリンクすることがこの社会保障問題のポイントなんです。必要な少子化対策は、第一は、非正規労働者の待遇改善です。次に、子育て中の人が働きやすい労働環境の整備。保育所や病院などの設備を確保すること。
 社会保障とは生存権なんです。社会保障の法関係とは、国と国民の間に成立します。「自助:公助」は入る余地がない。それを考えると、本当の意味での社会保障の危機が現在ある。

民営化するとなぜダメになるか


 公的な病院と民間病院の一番の違いは、民間の場合、患者が減って経営的に苦しくなると、立ち行くかどうかと考えざるをえなくなる。良心と自分の持っている技術と経営方針とのせめぎあいがいつも起こるんですよ。自分自身の生活を前に出したときに、医療の腐りが出るんですよ。
 独立法人化というのは、民間から寄付を募ったり、企業と経営して企業から金もらって薬を作る。当たり前ですよ。病院の経営だったら、利益なくなるとピンチだから、必死になってそう考える。それがもっともえげつない形で出てくるのが、医療の民営化です。当然のことながら、医療水準を守るということは、やっぱり憲法の最低水準の生活を守るということ、そうでなければ健康的で文化的な生活を守れないということです。
 したがって、民営化がいかに医療にとって悪いことなのかということを、何度もこの40年の医者の生活の中で非常に思ったということです。

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